こんにちは院長の磯目です。今回は「調節緊張」という病態についてのコラムです。
●教科書的な「調節緊張」の説明
目の中には「水晶体」と呼ばれるレンズのようなものがあります。「レンズ」といっても硬いものではなく、
「毛様体筋」および「チン小帯」と呼ばれる構造の働きに応じて厚さが変わる弾力性のあるものです。
これらの働きにより私達は遠くや近くをはっきり見ることができます。
その働きについて私が持っている教科書には以下のように書いてあります。
【近見時は毛様体筋の収縮(チン小帯の弛緩)により水晶体は厚みを増し、屈折力が増加。】
【遠見時は毛様体筋の弛緩(チン小帯の緊張)により水晶体は厚みを減らし屈折力が低下。】
そして「調節緊張」とは…
【毛様体筋が弛緩しない状態で、遠方視が障害される。】
と説明されています…。…どうですか?この説明で理解できる人はいるでしょうか…?
●スマホ等の使い過ぎで目が悪くなる恐れがある。
最近、スマートフォン等の使用をきっかけに急に視力が落ちたお子さんがよくいらっしゃいます。
お子さんに上記のような教科書的説明をしてもさっぱりわからないと思います…。
「目の中には、遠くや近くにピントを合わせる働きをする筋肉がある。」
「長時間のスマホやゲームで、目の中の筋肉に力が入りっぱなしの状態が続くと…?」
「筋肉が緊張して、うまくピントを合わせられなくなる。」
…そんな説明をしています。我ながら大雑把すぎる説明だと思いますが(笑)。
「スマホ等の使い過ぎで目が悪くなる恐れがある。」
ということを、簡単にでもお子さん自身に知ってほしいと思っています。そして…
「目が悪くなると、どんな困ったことがあるか?」
これを一緒に考えなければ、スマホ・ゲーム・タブレット等を控えることにはつながらないと思っています。
●いろんな説があります。
しかしながら「調節緊張という病態自体を認めない」という説もあります。
一方で「仮性近視」等とも呼ばれてきたこの病態が、新たに「スマホ老眼」等とも呼ばれ、テレビ等でとり上げられたりもしています。一体何が本当でしょうか…?
確かなことは日常の診療において、急な視力低下を訴え来院される方々が増えていること。
その方々の多くがスマートフォン・ゲーム・タブレット等で近見作業を過度に行っていること。
そのような現状を日々経験する中で、一時的な毛様体筋の緊張による視力低下―「調節緊張」はあり得るのではないか?と私は思います。
調節緊張が「目の筋肉の緊張状態」とするなら「その緊張を解く治療を行えばいい」ということになります。
私は目薬での治療(調節麻痺剤の眠前点眼)を指示しますが、これで視力が改善される方がいらっしゃいます。
他にも遠見訓練のようなものや、様々な治療法を提示するお医者さんがいらっしゃるかと思います。
このように調節緊張とその治療には様々な意見があります。
コラムを見て御相談を希望される方がいらっしゃいましたら是非御来院ください。
それでは次回コラムにて。