こんにちは、院長の磯目です。以前「調節緊張」という病態についてお話したことがありました。
「仮性近視」、「スマホ老眼」などという名前で説明されることもあるこの病態について、
「私は目薬での治療(調節麻痺剤の眠前点眼)を指示している」とお話しました。
そのためか、先日、近視予防を目的とした「マイオピン点眼液」という目薬について問い合わせがありました。
結論を言えば「当院では、マイオピンの処方を行っておりません」。
マイオピンは「低濃度アトロピン」という目薬です。
「アトロピン」という目薬自体は以前からあるもので、私も研修医時代に使用したことがあります。
アトロピンに「近視予防の効果があるのでは?」ということは以前から知られてはいましたが…
副作用が強く、近視予防の治療薬として使用されることは少なかったように思えます。
マイオピンもアトロピンですが「低濃度」ということがポイントです。
「100倍に薄めたアトロピンを使用するので、副作用も少ない」というわけです。
「それでは効果も薄まるのでは?」と思う方もいるかと……当然の考えだと思います。
しかし「近視予防効果は100倍に薄めても変わらない」という実験結果が出ています。
ここがマイオピンという目薬のポイントだと思います。
「副作用が少なくて、効果もバッチリなら最高じゃないか!」…患者さんが欲しがるのもわかります…。
しかしながら「現時点で当院では、マイオピンの処方を承っておりません」。
マイオピンの処方・経過観察の診療には保険が効きません。
医院により多少差はあるようですがマイオピンは1本3千円ほど。
加えて診察をせずにお薬だけというわけにはいきませんから…毎回の診察代、これにも保険は効きません。
そしてマイオピン点眼液は「最低2年間の継続使用が推奨される」とのこと…。
マイオピンの治療には、かなりのお金と時間がかかることになります。
もちろん、あらゆる治療がそうであるように、確実な効果が約束される目薬ではないでしょう…。
私が調節緊張の治療に用いているのは「トロピカミド」という成分の目薬です。
保険が効きますし(改めて薬局に確認しましたが目薬は数百円で手に入るそうです)、診察も保険診療です。
「トロピカミドの効果は弱い」、「効果があるという科学的根拠がない。」と言う説も存じております。
しかし、トロピカミドを処方した後、視力が回復される方がいらっしゃることも事実。
マイオピンの導入を見送り、トロピカミドを使用している先生方も未だ少なくないかと思います。
保険診療でマイオピンが処方可能となれば、大分違ってくると思います。
ホントによい薬なら保険診療の中で使えるようにしてほしいものですね。
それでは次回コラムにて。